ニューロング  
財団法人 清和国際留学生奨学会
韓国における米軍政 筑波大学大学院地域研究
崔  聖 倫  韓国
チェ ソンユン

1.

問題意識と研究目的
 1945年から政府樹立が成り立った1948年の3年間、韓国では大韓民国政府ではなく、‘米軍政’という独特の政治体制が存在していた。解放直後から政府樹立までの‘米軍政’が存在した時期は3年という短い期間であったが、韓国社会構造の再編、新しい国家権力の形成、分断国家の形成、資本主義国家の形成、在韓米軍駐屯の起源など、韓国史においてはどの時期よりも重要な時期と見られる。したがって、米軍政の構造と役割に対する分析なしでは解放以後の韓国社会を正しく理解することが難しいと言える。

2. 論文構成
 この論文は、第1章では、第2次世界大戦中のアメリカの朝鮮半島政策について、すなわち、アメリカが戦後世界秩序の主導権を確保するために、巨視的観点から朝鮮半島の信託統治を構想し、国務省と国防省が朝鮮半島の38度線を中心にソ連と分割占領する計画が樹立される過程を述べる。また、日本の降伏とともにハッジの第24軍団が仁川に上陸して米軍政を樹立する過程を、国内政治勢力が左右翼に分かれて表れる政治的葛藤を述べる。第2章では、米軍政が解放直後の朝鮮半島状況をどのように認識していたか、その結果、米軍が直接占領した38度線以南の政治状況をどのように改編しようと思ったのか、そして米軍政実施直後、国内政治勢力に対する具体的な改編計画を樹立する背景に該当する。米軍政がどのような政治的意図を持って行政委員会計画を立案して、以後、この計画を推進したのかを考察する。すなわち、この計画が持っていた政治勢力改編意図と、米軍政がこの計画の延長線として設置した大韓国民代表民主議院と左右合作委員会が政治勢力をどのように改編しようと思ったかについて述べる。また、米軍政の政治勢力改編計画が施行された結果、38度線以南の政治構図がどのように変化したかに関して考察する。米軍政が国内の政治過程に深く介入した1946年以後の状況が解放直後の状況とどのように変わったのか、そして米軍政の政策と朝鮮半島での状況変化がどんな係わり合いを持っていたのかを述べる。第3章では、米軍政の経済政策の背景としてアメリカの対韓経済政策を現状維持と経済安定政策、経済援助と資本主義体制の確立という観点から検討する。帰属財産問題に関しては、その問題を巡って各界各層の階級葛藤問題を労働階級の自主管理運動と全評を中心とした労働運動と帰属財産管理者の活動を通して検討する。また、旧日本人財産の接収過程と帰属された財産の規模、帰属財産の管理組織、管理人の選定と地位、管理実態、管理人制度の変化を通じて、帰属財産の一部が米軍政期に売却される過程を述べる。結論では、米軍政期の政治政策と経済政策の特徴と米軍政の構造と性格を簡単に要約する。
3. 米軍政の政治政策の特徴
 第一 解放3年の過程で米軍政は単に朝鮮半島に影響を及ぼした一つの存在に過ぎないのではなく、朝鮮半島の状況を変化させた重要な主体であったという点である。米軍政は変革的な状況であった朝鮮半島で自分の目標を貫徹するために、38度線以南を直接占領して以後、変革を鎮めるために政治過程に深く介入した。これは政治勢力改編計画を立案してそれを推進する過程でよく現われる。すなわち、米軍政は朝鮮半島がソ連の影響下に入らないようにするために、変革を追い求める政治勢力を分裂弱化させようとし、更には、アメリカの大韓政策を支持する政治勢力を育成しようとした。このためには米軍政は‘行政委員会’計画を立案し、この計画を立案し、この計画は延長線として‘大韓国民代表民主議院’、‘左右合作委員会’などを設置して南韓の政治勢力を改編しようとした。米軍政は政治勢力を自分の統治目的に有利に再編するために国内の政治過程に深く介入した。その結果、南韓の政治構図が改編された。統一戦線の結成を追い求めた政治構図は左右翼構図に改編され、国内に政治的な基盤を全く持つことが出来なかった李承晩が右翼勢力内部の中心に立ったのである。また、解放直後主導権を握っていた変革勢力は分裂し、その力が以前に比べて著しく弱化した。

 第二 米軍政が朝鮮半島の状況を作っていく絶対的なパワーを持った存在ではなかったという点である。米軍政の政治勢力改編計画の中で、安定的な支配連合を新たに作ろうとした政策が失敗したという点はこれを表している。すなわち、米軍政は左右合作委員会を結成し、左派民族主義勢力を米軍政の体系の中に包括することで安定的な支配連合を作ろうとした。この為に、左翼連合である民主主義民族戦線から左派民族主義者たちを分離させなければならなかった。米軍政は左派民族主義者たちを左右合作委員会に参加させることには成功したが、支配連合に包括することはできなかった。たとえ米軍政が保守的で、反共的である政治勢力を支援、育成して政治権力を掌握することができる基盤を用意しても、安定的な支配連合を作ろうとした政治勢力改編意図が成り立たなかったので、米軍政の支持を受けた保守反共勢力がむしろ孤立するしかなかった。1947年以後、左翼民族勢力だけでなく、左翼民族主義勢力までも米軍政の体系に包括されることを拒否した。このように米軍政は38度線以南で広範囲な政治勢力の支持を受けることができなかったから、1947年以後保守反共勢力と共に単独政府樹立を推進した。

 第三 ‘行政委員会’計画の性格について既存の研究では行政委員会計画をただ単独政府樹立案であると評価することで、この計画が持っていた政治勢力改編意図を把握することができなかったが、この計画の内容と推進過程を通して、行政委員会計画はアメリカの対韓政策を施行するのに有利にするために、朝鮮半島の政治勢力を改編しようとした計画であったという点が明らかになった。したがって、この計画は朝鮮半島問題を巡って、米ソの関係変化にかかわらず持続的に推進され、この計画の延長線として大韓国民代表民主議院、左右合作委員会などが設置された。

 第四 米軍政が主導したいくつかの事件が持つ政治勢力改編意図を把握することができる。米軍政が1945年12月12日、人共否認声明を発表したことは人共と臨政の連合を阻んで統一戦線の結成可能性を遮断しようとしたことであり、1946年2月民主議院を結成したことは統一戦線の結成を阻むために国内政治構図を改編し、右翼勢力内部で李承晩を浮上させようとしたのであった。また、左右合作委員会の設置は左派民族主義勢力を米軍政の体系の中に包括することで、広範囲な支配連合を作っていく一方、朝共を孤立させようとする意図を持っていたのである。
4. 米軍政の経済政策の特徴
 米軍政期の経済政策は自由市場経済体制の確立を理念的基盤としながらも、実在的には経済分野に対する計画と統制を実施したという点で矛盾を持つ。米軍政の窮極的目標は私的資本を中心にする資本主義経済体制の確立であり、米軍政の経済政策は一般的にこのような資本主義的生産関係を維持するという目的の下で私的所有権の認定と自由市場経済体制の樹立という原則の中で出発した。しかし、初期を除いて米軍政期の間は大部分食糧供出とともに統制政策を実施して旧日本人財産を接収することで帰属企業体及び土地に対する権限をずっと維持しようとした。米軍政は食糧供出とともに旧日本人財産を接収、管理することで経済安定を維持しようとし、植民地体制との断絶がもたらした経済的な矛盾を援助と統制によって解決しようとした。また、積極的な意味での生産増大や経済再建のために努力するよりは現状維持政策を実施した。このような米軍政期経済政策の特徴を簡単に整理すると、次の通りである。

 第一 米軍政期の経済政策は、アメリカ本国の対外政策と占領当局が現地で体験した具体的な状況、市民社会内の諸勢力の対応の複合体として現われた。アメリカや米軍政、国内特定勢力の一方的意思通りに順調には進行されなかった。もちろん、米軍政の経済政策は基本的にアメリカの戦後世界支配戦略と係わった対韓政策のフレーム内で成り立った。特に、経済政策の形成過程で作用した重要な要員は当時米ソを取り巻く政治状況の変化であった。韓国は第2次世界大戦以後、他の周辺地域と違って、米ソ分割占領によって、米ソが直接ぶつかり合う独特の状況が展開された。このことから、体制競争の意味が強いと言わざるを得なかったのである。また、アメリカは対極東戦略の脈略から見ると、韓国の状況変化は重要な意味を持っていた。したがって、資本の直接進出に対する関心よりは全般的に政治、社会安定を追及することで長期的に南韓に対する支配力を行使しようとした。しかし、米軍政の具体的対韓経済政策の内容は米ソ関係の変化、南韓内部の動きなどと係わってアメリカの全般的な対外政策のフレームの内で変化した。米軍政期の経済政策の変化には外的には冷戦体制の形成と米ソ共同委員会の失敗が、内的には南韓内の階級闘争の展開が重要な役目をした。要するに、米軍政の経済政策が形成される一連の過程はある特定勢力の利害がはじめから一方的に貫徹されたことではなく、当時の状況局面にしたがって柔軟に検討しなければならない。

 第二 米軍政の旧日本人財産の処理と土地改革、食糧政策と援助政策などは互いに無関係に展開されたのではなく、経済政策という脈略で相互関連性を持っている。朝鮮半島において米軍政経済政策の主要目標に解体危機にあった資本主義国家の確立であった。米軍政は国際法的慣例もなかったにもかかわらず帰属企業体を売却して資本―労働関係を定着させることで安定的な資本主義社会に再編しようとし、反共の有力な手段であった農地改革を推進することで農民を体制に吸収させて地主階級を産業資本家化しようとした。また、アメリカはある国の政治不安や混乱は経済的破綻から始まると見て、政治不安や混乱による共産化を阻むためにはアメリカの経済的、財政的援助が提供されなければならないと考えた。

 第三 米軍政の経済政策の結果、南韓社会には政治的には親米的性格の資本主義国家が形成され、社会的には市民社会内の階級構造が変化し、経済的にはアメリカを中心とする世界資本主義体制に編入されることで対米従属構造に再編されるきっかけになった。また、結果的に見れば、同じ帰属財産といっても帰属農地は小作農に分配された一方、帰属企業体は既存支配勢力の所有になった。全般的に帰属財産は自由市場経済体制の確立と資本主義国家の構築のための物的基盤になった。このように米軍政の経済政策の結果は多様な側面から起こったが、これは第2次世界大戦以後変化した世界体制の中でアメリカを中心にした資本主義世界体制を社会主義の脅威から守る防波堤を朝鮮半島に形成するというアメリカの対韓戦略が結果的に成功したと言える。米軍政の経済政策がこのような資本主義国家形成の物的基盤を提供した。米軍政経済政策などを通じて市民社会における多くの勢力と階級構造が再編され、政治、社会的安定に主な意図があったアメリカの援助は結果的に南韓社会が対米従属的経済構造に再編されるようになるきっかけを提供した。結局、米軍政期は植民地社会が解放以後、従属的資本主義社会に転換される時期と言える。



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