|
4番目の機密保持の事例の紹介です。第2次大戦中の勝敗を決めた要因は、連合国側の物量生産能力であるとされてきました。ところが、極秘事項が情報公開されるに従って、連合国側の情報管理が徹底していた事も勝因のひとつだと分かって来ました。例えば、ドイツ軍の暗号、極秘情報は、連合国側にすべて解読されていたのです。なぜかと言うと、コンピューターの原理とシステムを連合国は既に実用化していたからです。ドイツのUボートの暗号(エニグマ)解読の為、イギリスで工業団地程の敷地に、暗号解読部隊が存在していた事実は映画「エニグマ」(エニグマとはドイツ軍の暗号解読機およびシステム=イラスト)にもなっています。ところが、暗号解読に成功した事実は、極秘とされ、戦後長い間(1970年に情報公開)、その秘密が守られていたのですから情報管理も徹底していました。情報漏れを知らずにドイツ軍のUボートは、ほぼ全滅し、米英の通商航路の遮断に失敗しました。日本の暗号もすべてアメリカに解読されていて、その情報の価値は、戦艦大和数隻分だろうと言われています。なぜなら戦艦は、時代遅れで不要となっても燃料と物資を大量に消費します。それに比べて、輸送船は生産物資を本国へ運ぶ事ができ、敵の暗号解読によって安全に航行できるようになれば、莫大な生産を生み戦争継続ができる。又逆の場合は、生産物資が枯渇して、戦争継続は困難で、降伏せざるを得なくなります。アングロサクソンは兵器よりも、兵站(ロジスティック)を大事にし、情報管理を最優先事項と考えたのは、枢軸国側の考えとは対照的です。
このように日本人とアングロサクソンとでは、情報に関しての考え方に相違点が見られます。日本は産業国家。いい製品を作り、それを他より安く売れば、市場を席巻できる。それを第1と考え、その為の情報は2次的に考えます。ところが、欧米(特にアングロサクソン系国家)では、情報こそ最重要事項と考えます。良い情報さえあれば、マーケティングが完璧に行え、良い製品と低コストは後から付いてくると考えます。欧米で言う良い情報とは、つまり特ダネの事。他者より先に知り、それが競争相手に漏れないうちに利用できるから、意味がある。だから、情報を掴む事以上に機密情報の漏洩防止にエネルギーを費やします。ところが、日本人のトップは情報にコストはかからないと考えてしまいがちです。まして、情報漏えい防止のコストなで論外なのです。
また知的財産の保護に関しても、日本では、最近やっと尊重するようになったという程度。ところが、欧米で知的財産つまり知識を持った人や特許をなぜ大切に考えるかと言うと、知的財産は尊重しないと、すぐ競争相手の方に流出してしまうという恐怖心があるからです。知的財産とは人間そのものだからです。民主主義国家では、人間を金庫の中に閉じ込めておけないので、知的財産はコストを掛けて流失を防ぐのです。
個人情報についてはどうでしょうか?日本人は酒席で個人情報にあたる事でも第三者にペラペラしゃべってしまいます。農耕民族、村社会では、隣の家の事は我が家同然に知っていて当たり前なのが習慣だからです。ところがキリスト教文化では、そんな事をすると、社会的信用と友人を失ってしまうので、慎重です。教会での懺悔(個人情報)は秘匿が原則。宗教生活のみならず個人生活でも、ビジネスの世界でもそれが歴史的に徹底されて来たわけです。日本の社会も欧米のように、複雑になり、またインターネットの普及で、個人情報が拡散される恐れがあるので、個人情報の管理は徹底されるべきだと考えます。機密保持は、企業の社会的責任である前に、企業が存続できるかどうかの存在意義なのです。企業が存続できるかどうか以前に、人間としての存在意義を問われる要因なのです。
|