| 3番目の安全対策、事例の紹介です。
安全対策ばかりやっていると、経済戦争に負けてしまうという意見も出てくるかもしれませんが、安全対策を怠って戦いに負けた例を紹介します。これはNHK「その時、歴史が動いた」で放送されました。太平洋戦争中、零戦とグラマンの安全対策が戦局にどう影響したかという話題です。
日本の軍部上層部は、航続距離、旋廻性能、スピード増加、すべてを新型の零戦性能に追加するよう設計者に命じ、その優先順位をつけませんでした。軍上層部は各部の意見交換や意思統一をせず、民間の航空機メーカーに自分達のメンツをただ押し付けたのでした。その結果、設計者は機体フレームを極限まで削り、耐圧構造と安全性を無視して設計に入ったため、零戦には急降下直後に急上昇をすると空中分解するという致命的な欠点がでました。また、パイロットを守る為の防弾対策はほとんどありませんでした。その為、初戦では優位だった零戦も、優秀なパイロットを大量に失いました。
ところがアメリカ軍はこれと対照的です。新型グラマンのF6Fヘルキャットは、それまで零戦に勝ち目のなかった旧型F4Fワイルドキャットを一時的に改造しただけの機体ながら、安全対策はしっかりとし、スピードを最優先するという設計思想を取りました。その結果、パイロットの喪失を最小限に食い止める事ができました。F6Fは零戦に後ろから攻撃されたら急降下で逃げる。零戦は急降下すると空中分解するから追ってこられない。零戦を攻撃する時も、高い位置から急降下で一撃離脱。これなら、例え訓練期間が短い未熟なパイロットであっても熟練した優秀なパイロットと戦えたのです。
戦時中、日米の生産比率は1:10。日本軍は、本来なら、損失を最小限に食い止める判断をしなければならないところ、安全対策を無視して優秀な人材と貴重な戦闘機を大量に失ってしまったのです。アメリカは戦争中でも、安全対策を最優先事項と考え、生産の意思決定は、生産効率の専門家、統計学者に任せ、軍上層部はその統計をもとに、戦場での作戦に専念しました。戦いの勝敗は、兵器の優秀さ、生産力の多さで決まるのではありません。ロジスティック(兵站)と人間をどれだけ大切に考えるか、つまり安全対策、ダメージコントロール、危機管理を如何にうまくやれるかにかかています。この件は、安全対策を怠っていると、初戦で優位に立っていても、長期戦になると負けてしまうという良い例です。だから安全対策は勝敗を決する最優先事項になると思います。
戦争中の話を今、なぜするのかとお思いでしょうが、最近似た話があります。日本製品は、長持ちする、短納期、性能が良い、そして価格が安い。そういう神話で売れてきたので、安全対策を軽視してきたのではないでしょうか?つい最近のPSE電気用品安全法の問題は、他の先進国は20年以上前にクリアしています。これは、安全対策をして社会的責任を果たすという本来の目的以上に経済戦争に勝利する要素があったと今にして思います。欧米では、人ひとりの命が実に高く評価されてきました。ところが今の日本、いろいろな製品で過去に起きていた事故への対策が製品への安全対策に反映されているでしょうか?
今ならまだ間に合うはずです。戦時中の反省から、日本の製品に対する評価「日本の製品は安全である」を新たな神話にしていきたいと願っています。 |