ニューロング  

ジュロンの出会い(シンガポール肥料ターミナル)
海外便り 2005年6月 メニューへ
第5回  ジュロン黄金期 (アジア通貨危機前夜 1993-1995)


シンガポール・バブルの時代からアジア通貨危機が発生するまでは、シンガポール経済にとってもOBTにとっても大変良い時代だった。記内(きうち)氏の在任中から、三菱商事本社の方針はOBTの自立化で、採算が取れるようにするというものだった。この路線に沿ってOBTを引き継いだのは、瀬尾氏(在任期間1993-1995年)だった。

この頃になると三菱商事の肥料取引はシンガポールを中継せず、バルクのまま東南アジア諸国へ直行するようになったので、OBTは肥料ターミナルというよりは一般の倉庫業務を含む多目的ターミナルとして活躍するようになった。

しかし、JTCとの契約はバルクを荷揚げして袋詰めの作業をし、出荷するという事になっており、OBT独自の取引として塩化カリ及び尿素をバルクで輸入し、袋詰めの後、地場で販売する仕事が中心となっていた事に変わりはなかった。

ところが、当時、シンガポールの物流は大変活況で、OBTも例外ではなく、一般貨物の保管を含む物流業務が大盛況となり、営業をしなくとも仕事はどんどん舞い込んで来た。今から想うと“夢のような良き時代”と瀬尾氏は振り返る。倉庫の建物内には荷が入りきれず、軒下まで使って商品を保管したという(写真)。それでも、OBT倉庫はジュロン港の保税地区内にあり、外部から遮断され、警備も行き届いているので、盗難の心配はなかった。ドアなどは、開けっ放しの状態でも何の問題もなかった。

扱う商品は多種多様。雑貨から工業原料、自動車部品まで何でもある。自動車部品にも色々あるが、消防自動車のシャーシまで保管されていた。シンガポールという港は、世界経済、国際政治の縮図を見せてくれる万華鏡のような所。雑然と並んだ商品越しに向こうを覗くと、超大国が何を考え、途上国が何で喘いでいるかまで、見えてくる。多目的ターミナルは、さしずめ未来へのタイムトンネルというところか?

OBTが独自に開発した物流商品にケイ砂がある。ガラスの原料である。要するにオーストラリアから来る砂。大変安価な商品なので、利益を出す上で、物流には独特なノウハウがいる。オーストラリアからは、数万トンの本船でシンガポールに来る。それを埠頭に野積みして、東南アジア向けの3000トン程度のバージ(艀=はしけ)に積み替えるのだ(イラスト参照)。瀬尾氏は倉庫業の専門家ではなく、このような方法も日本の国際埠頭鰍フ現場で学んだもの。

JTCの公共バース(貨物埠頭の所定位置)を借りて、コンクリートブロックを配列した壁によりヤードを作る。ブルドーザーで崩れないように山型に積み上げ、ブルーシートをかけて置く。本船が入った時には、ジュロンの公共埠頭に数万トンのケイ砂の山が出来た訳で、遠方からも見えて非常に壮観であった。

バージが到着すると、野積みのケイ砂をトラックでバージの接岸場所へ運び、ベルトコンベアでバランスをとりながらバージに積み込む。ケイ砂の搬入搬出時、ヤードと本船(又はバージ)間を輸送用のトラックが走り回る事になるが、公共埠頭であった為、通り道には異物が散乱していた。特にひどかったのはセメント・クリンカー(灰)だった。これがトラックのタイヤに巻き込まれ、ケイ砂のヤードに持ち込まれる事になる。ガラスの原料であるケイ砂への異物混入は、何としても避けねばならず、非常に苦労した。

シンガポールのバブル期は活況だったが、一般的に人件費の高騰、人手不足等を生み、1996年には成熟期を向かえ、その後1997年にはアジア通貨危機に見舞われた。OBTは、無借金経営を続けたので回転資金の調達には問題なく、逆に銀行からは「借りてくれない」とのクレーム?を頂いたとの事。

しかし、OBTはJTCとの契約期限切れを目前に控え、設立目的である親会社の肥料取引の為の機能は、既に失っていたし、またアジア通貨危機後の一般物流携帯の変化もあり、契約期限の延長はせず、閉鎖する事となった。

OBTの歴史は約20年で終わったが、激動する東南アジアの中にあって、非常にユニークな存在であった。OBTに携わった方々は、今でもOBT会(OB会)を定期的に開き、その時の苦楽を思い出しながら親交を暖めている。


OBT (ORIENTAL BULK TERMINAL PTE LTD)
1981年6月5日設立、シンガポール・ジュロン港保税地区
三菱商事出資、シンガポールドルで約3億円相当
保税地区内での肥料袋詰め出荷、年間15万トン
計量機、袋口縫いミシン4系列をニューロング・シンガポールから納入。




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