海外便り 2004年6月 メニューへ |
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| 「エーゲ海の真珠と豚」 ギリシャ宗教事情 | |
かつて、「日本は神の国」と言って、物議を醸した総理大臣がいた。後日ご自分の説明不足を後悔して、「あれは、八百万(よおよろず)の神々と言うべきだった」と訂正した。確かに多神教国家の日本では、山の泉や台所にも神様がいる。家に帰れば一番怖いカミさんまでいる。元旦は神道を信じ、春秋には仏事を行い、クリスマスには聖夜を過ごし、大晦日には又、仏教寺に行くという宗教生活。欧州人からみると何とめちゃくちゃな宗教生活であろう。そんなでたらめな宗教感覚では、とても外国宗教の解説など出来ない。 ましてや、ギリシャのような複雑な宗教背景、文化的多様性、民族的に混沌とした国を理解するのは不可能に近いだろう。しかし、逆説的に言えば、ギリシャ神話は、どこか日本古来の神話にあるように人間味があり実に興味深い。又ギリシャ正教は一国一宗派の要素があり、日本の仏教に似ている。正確にいうと、キリスト教は、バチカンを中心とするカトリックとコンスタンチノープル(現トルコ領内イスタンブール)を中心とする正教会(西欧からみると東方正教会)に分離した(1054年東西教会の分裂)。(ギリシャ正教会とは東方正教会 Orthodox の一般呼称である。ギリシャ正教会はギリシャの教会と言う意味ではなく、ギリシャ語文化圏の教会という意味である。正教会は異国に伝道する場合、すぐにその国の言語で聖書や聖人伝、祈祷書を発行し土着化をはかった。 カトリック教会が永い間、ラテン語こそ聖なる言語であると信じられてきたのと異なる。日本のカトリック教会でもつい最近まで誰もが理解出来ないラテン語でお祈りがなされていた。ちなみに日本では日本正教会、アメリカではアメリカ正教会と国の名が付けられるが、すべてギリシャ正教会に属し、五世紀頃に編纂されたビザンチン典礼を継承している。)各国の正教会はお互いに干渉し合う事なしに独自の道を歩んだ。カトリックは総本山(バチカン)がある。 ギリシャでは、キリスト教文化とギリシャ神話的文化が合体して、最高神ゼウスがギリシャ正教会の唯一神となったと筆者は理解しているが、こんな事を書くと、「それは違う」とギリシャ人から一日がかりで説教されそうだ。とにかくギリシャ人は説教好き(失礼しました)議論好き。ギリシャ神話に哲学が加わると議論は一日では終わらない。さらに「民主主義とは何か?」と問えば、議論は果てしなく続く。この議論の峻烈さに比べれば、日本人の大好きな政教分離等という議論はまったく無意味な井戸端会議に思えてくる。 神話、哲学、それにイコンや聖歌に代表される美しい宗教文化。ギリシャ文化は七色に変化する真珠の輝きがある。 |
ギリシャ出張中、予期せぬ祭日にぶつかり1日を無駄にした。ギリシャは独特の暦を使い、ギリシャ正教の祭日も他の欧州国家とは違っていてわかり難い。(正教会では 特に教会祝日に 現在のグレゴリオ暦を用いるよりも旧暦ユリウス暦を使用している場合がある)。 その日、ホテルの観光パンフレットに出ていた、半日「おのぼりさん」用エーゲ海クルーズ観光船に乗って時間をつぶす事にした。なぜなら、「エーゲ海の真珠」が大ヒットした1970年代、若者だった筆者には、エーゲ海ブームの記憶が残っているからだった。あの時は、新婚旅行ツアーが神聖なギリシャ神殿で“神前”結婚式を挙げようとして問題になった。そんな宗教オンチの恥はさておき、確かに紺碧の海は、日本にはない色彩で美しかった。アテネから近いスニオン岬はヨーロッパ大陸最南端の岬である。切り立った崖の上には、ポセイドン(ギリシャ神話の海神)の神殿址があり絶景だ。 最近、日本でも伊豆七島の新島でポセイドン神殿のコピーができた。そこは何と温泉なのだ。神聖な神殿(?)でバスタオルを巻いて温泉に浸かっている怠惰な人々を見たら、ギリシャ人は激怒するに違いない。 それにしても、エーゲ海クルーズ観光船が各島に着くと、「おのぼりさん」目当てに物売りが押し寄せて来て興ざめした。日本語で「お土産、どれでも千円」とか、「海老、イカ、たこ。何でも安いよ」と大声で誘っていた。商魂逞しく、醤油の匂いをちらつかせた屋台まである。せっかく紺碧の海で哲学に目覚めるつもりが、だだの肥えた豚になってしまうではないか。そう思うと自分自身に腹が立ってきた。所詮、豚に真珠という事か? (注)本文執筆後、日本正教会の釜谷氏に監修をお願いしました。赤字部分の訂正文は原文で掲載させて頂きました。赤字部分以外の文についての訂正、ご指摘ありましたら、pbr@newlong.comまでご意見をお寄せ下さい。失礼の段、謹んでお詫び申しあげます。
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