海外便り 2004年3月 メニューへ |
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| 「ガウディの末裔」 スペイン的構造改革・過去と未来の融合 | |
神様はスペイン人に良い酒といい女を与えたが、良い政治だけは与えなかった、と言うスペインのことわざがある。良い酒、いい女については、当たっているかもしれないが、最近の改革路線の成功を見るかぎり、悪い政治は過去のものだ。第2次大戦後も長くファシズム政権が続いたが、突然、王制復活。時代は19世紀にもどるかと思うと、その国王は革新的な国王で、その後目覚しい経済発展をとげ、一躍、EUのなかでも有数な工業国になり、安定した政権を保っている。それが十数年の間に起こったのだから、構造改革のお手本というしかない。 さて、スペインのなかでも一番先進地域と言われるバルセロナで一際人目を引く構造物は、アントニオ・ガウディ設計の聖家族教会だ。19世紀に着工して21世紀になってもまだ建築途中。いつ完成するかも誰にもわからない。いつここを訪れても、昼休みの工事現場といった雰囲気で何ともノンビリしているところが、いかにもスペイン的で微笑ましい。これがスペイン人の生活態度、政治意識、そして芸術なのかもしれない。しかし、それ故に聖家族教会は有名になった。もし、この教会が今あっけなく完成したら、ただの「現代建築」でグロテスクな教会となり、案外、「日本人が作った無名の教会」と誤解されてしまうかもしれない。(現在の主任彫刻家は日本人) それと同じで、構造改革もあっけなく終わってしまったら、誰も改革を断行した人の名前など覚えはしないだろう。そういえば、日本の戦後復興を成し遂げた人は誰と聞かれて、答えられる日本人はいるだろうか?吉田さん?池田さん?佐藤栄作さん?誰も進駐軍の引いたレールの上に乗っかった人を功労者とは称えないだろう。ところが、スペインのカルロス国王は政治的天才と言うほかない。王制以前、独裁者フランコ将軍に英才教育を受けたと言われながら、国民が要望した社会主義政権を受け入れ、民主化が達成されたと思うと、今度は保守政権を受け入れ社会の安定化を計る。バランスの取り方とタイミングをつかむのが非常にうまい。過去と未来を融合させる天才である国王は、スペイン国民から非常に愛されている。 |
このバランスとタイミング、過去と未来の融合でスペイン国民から愛されている人物と言えば、もう一人いる。先ほどのアントニオ・ガウディである。彼には、聖家族教会に託した壮大な夢があった。まず、彼の生存中に完成させる気などは初めからなかった。設計図を残さず、その時代を生きる人間がその時代の感性で仕事を続けられるようにしておいた。各鐘楼、各門、各構造物とも、未完成でも自立できる構造になっているので完成を急がなくとも良い。後は完成するタイミングである。しかし、先の事はわからない。完成間近で、テロに会い、周りの建物といっしょに吹き飛んでしまうかもしれない。また核戦争が始まり、頭上から熔けてしまうかもしれない。そうなれば、人は神に祈らざるを得ないだろう。どのような事が起きても。その時に聖家族教会がどのような形をしていても、この建物はその時代に存在意義がある。誰も未来の事などわからず、その時代を一生懸命に生きるしかないのだから。 こう考えれば、構造改革の遅れなど気にならない。皆、スペイン人、いやガウディになれば良い。一緒に祈ろう、ニューヨークのグラウンドゼロで、又は広島の原爆ドームで。そういえば、ふたつとも図らずも聖家族教会に似た形になってしまった。 |
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