ニューロング  

第1話
海外便り 2003年7月 メニューへ
 「フランダースの米」 ベルギー人はお米をどのように食するか?

 日本から来る出張者がベルギーに来て先ず言うことは、「小便小僧とフランダースの犬を見たい」である。前者はブラッセルにあるので、気軽に案内できるが、フランダースの犬になると、考え込んでしまう。少なくとも筆者がいた時分には銅像などなかった。あまりに日本人が次々に聞くものだから。観光関係者がそれなら観光名所にと銅像を建ててしまった。ところが「フランダースの犬」は、本家ベルギーでは無名に近い。困り果てた関係者は、「そういえば日本で犬の銅像を見た」と早とちりして、上野の西郷さんと犬の銅像に似たものを建ててしまった。というジョークまである。
 これに似たような勘違いの失敗を筆者は、フランダース地方でやってしまった。
レストランで舌平目のムニエルを注文したとき、ウエイター氏は慇懃に「添え物は、ポテトにしますか米にしますか?」と聞く。日本人の常識で言うと、皿にフレンチフライが2・3本、ご飯が4分の1程度に盛ってもらえるものと思い、両方欲しいと答えた。ところがフレンチフライポテトの量は、すさまじかった。あの名犬パトラッシュでさえ、これを平らげたら死んでしまうだろうと思う程の量を舌平目の上にうず高く盛り上げてしまった。ところがご飯はいくら待っても出てこない。催促すると、そこにあるだろうと、サラダ皿を指差した。サラダをフォークでめくって見ると、確かにドレッシングでビチャビチャになり、煮えそこないの米がサラダ底の方にへばりついていた。

 

概して米の地位は、サラダのなかの「具」程度しかでないようだ。あるいは、それほどの量しか出せない程、高級品なのかもしれない。

 なにしろ、お米をふっくらシャキリと炊く習慣は、彼らにはない。日本人があまり住んでいない田舎のスーパーで売っている米といえば、ミシシッピー米(クッキーの缶ような入れ物に黒人のおじさんの絵が印刷されていた)か、スリナム米(オランダが植民地としてもっている南米地域の米)が多かった。それをリゾットとかサラダの具にして少量食べる。炊き方も日本とはまるで違う。水を一杯にいれた鍋で水が沸騰したら、すぐ水を捨てて、そのまま放置せよとパッケージに書いてあった。自分でやってみたが、あまりのまずさ(お米にはシンがあった)に全部捨ててしまた。

 一番、日本人の口にあったのが、カリフォルニア米で、袋に花札のような図柄が印刷してあった。それがスーパーマーケットにならんでいると、なぜが微笑ましく感じられた。今は、品種改良も進み、日本の米と同じような食感を味わえるらしいが、その当時では、まだオニギリがにぎれなかった。何とかおいしく炊ける方法はないものかと考えた挙句、思いついたのが、釜飯の素焼きの釜だった。これはいい。どんな米でも、水加減適当で、とろ火にして放置すれば、おいしいご飯ができている。釜の底がおこげになっても、そこがまたうまい。

 あれから、かなりの年月が経った。むこうの人々は今、おいしいご飯を食べているのだろうか?もしかしたら、名犬パトラッシュとネロ“中年”の銅像の前で、「フランダースの釜飯」という名の店が出来ているのかもしれない。





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